あなたという形

2003年10月24日
 心が震えた。
 そして、目から自然と涙があふれてきた。
 人間は、なんと切なく、なんと美しいのだろう。

 一昨日あたりから、乙一先生の小説を少しずつ読み出した。きっかけは彼女が夏休みの暇を持て余して買った「さみしさの周波数」という本だった。

 彼女がそれを買った当時は、私はその本に微塵の興味も示さなかった。まぁ、よくある読まず嫌いというやつで、読む前から「くだらない」と決め付けている感があった。すぐ後に気づくことになるが、それは大きな間違いだった。でも、この時点でこれを読んでいたら、きっと今の自分は居ないに違いない。少なくとも、このときは読んでいなくて正解だったと思う。


 そして、別れた後で彼女はこの本を自分に貸してくれた。
 自分は、一発でKO。あぁ、なんてすばらしい本なんだろう。と、思った。
 何せ、授業中に読んで、涙が止まらなくなり、後ろの席のG君にティッシュを借りて、かんでもかんでも垂れてくる鼻水と格闘し、机の上に紙くずの山を作り、授業中に1秒に2回、それを4秒おきに1回のペースで聞こえてくる鼻をすする音にみなさん迷惑したことだろう。ごめんなさい。自分は涙腺が弱いのです。
 少なくともこのときはこの本(以外にも、乙一先生の書いた本いろいろ)がこの後、自分達を救うことになるとは思いもしなかった。

 一昨日、彼女に付き合っている最中にした全てのことを話した。彼女は、ショックな顔で自分を拒絶した。

 もうだめかと思った。

 その夜、自分は自責の念で自殺を考えた(自分勝手なものだ。それならはじめからやらなければよいではないか)。でも、それはできなかった。


 翌日、彼女と少し話した。まだ、ショックを受けているようで、顔はやつれていた。それに、話かけづらい雰囲気だった。
 そのとき、まだ自分は彼女から渡されて読んでいない本があったので、すこし落ち込んだ気持ちでその本を読んだ。それが「失踪HOLIDAY」。

 読み終えたとき、全てのことが明るく、そして暖かく思えた。そして、自分のやるべきことが見えた。翌日、自分はそれを行動に移す。
 それは、彼女と帰ることだった。


 そして、それは見事に成功し、まぁ、お互いは改めて友達としての絆を深めたわけだ(途中はしょってるため、わけのわからない結論だが)。


 自分達を救ったのは、人間じゃなかった。本だった。二人の関係が崩れそうなとき、彼女と自分の間にあったのは、タイミングを逃して、返し損ねたこの本だった。
 この本は、一生の宝物になると思う。少なくとも、この本がなければ今の自分達は存在しない。

 まだ書きたいことがあるけど、今日はこれでおしまい。

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